「ゆかいな妄想日記」は、YOUNiiiiQの編集者・伊藤愉快が月1回、
「福島にないもの」をテーマにこんなことしたら楽しいな、こんな場所あったらおもしろいな、
なんてことを無責任に妄想して口にする妄想コラムです。
第5話 図書館のようなカフェ
すっかり日が短くなってしまった。
仕事から帰る頃には、外は真っ暗。日が短いってなんだか損している気分。
予定がない日でも、真っすぐ家に帰るのはなんか違うなって時がある。でも、行きつけの飲み屋で知り合いと遭遇し、楽しくなってしまい盛り上がって帰るが遅くなったら、明日の朝絶対に後悔するのも分かっている。
ひとり時間がほしいけど、家で過ごすひとり時間ではなくて、いつもとは少し違う特別なひとり時間がほしい。こんな時は、誰にでもあるのではないだろうか?
そんな時、ぼくは決まって「図書館のようなカフェ」に行く。
「図書館のようなカフェ」?
そう、「図書館のようなカフェ」
「図書館のようなカフェ」は、その名の通り図書館とカフェが融合された場所。
カフェとは言いつつも、基本的な利用方法やルール(マナー)は図書館と同じ。
■図書館のようなカフェのすゝめ
一、ひとりの時間を誰かと過ごす空間
二、読書や勉強、資料を広げた作業をすることができる
三、図書館だが、カフェでもある。こだわりのコーヒーとおやつで図書館よりも贅沢に、カフェよりも唯一な時間を過ごせる
■マナー
・私語は厳禁。ここでは、挨拶さえも不要。(※軽い会釈やアイコンタクトは、ご愛敬までに)
・携帯電話は、マナーモードに設定してください。
・イヤホンの音漏れやパソコンを叩く音には注意をしてください。
・2名以上での利用はご遠慮ください。
・ひとりの時間ですが、誰かと共有する空間・時間。思いやりと気遣いで完成されることをお忘れなきように。
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店に入ると、小さな音で流れるレコードの中に扉を閉める音が響き渡る。(あっ、注意しながら閉めたんだけどな)
店内は、注文をしてから席に着くシステム。足音に気を付けながらカウンターへ向かう。仕事終わりだったが、日中は忙しくお昼を食べるのが遅くなってしまった。お腹があまり空いていなかったので深煎りのコーヒーとチョコレートを注文。
席数は、カウンター席が10席、2人掛けのテーブル席が3席。
カウンターとテーブル席には、先に誰か座っているのがわかったが、照明が通路の足元と各テーブルの手元にしかないため表情までは確認できないようになっている。
テーブル席が空いていたのだが、カウンターの一番端の席が空いていたので、そこに座ることにした。(端っこって、なんか落ち着く(笑))
一向に読み進んでいなかった、常に持ち歩いている本を読むことにした。こういう意図しない時があるから、本は一冊持ち歩いていたい。
2.3ページ読み進めたくらいで、店員さんがコーヒーとチョコレートを席まで届けてくれた。さすが、この店の店員さん。目の前に来るまで存在に気が付かなかった(笑)完全に黒子になっている(笑)
コーヒーは少し苦い、チョコレートは思ったより甘すぎない。でも、とても落ち着く苦みと疲れた体には染み渡る甘さだ。
店内に入った時は、レコードのボリュームが低すぎないか?とも思ったが、席に座って心落ち着かせて耳を傾けてみると、ちょうどいいボリュームだったことに気が付く。
ここにいると心地が良すぎて時間を忘れてしまう。店内に時計がないのも時間を忘れてしまう理由。
時間を気にしないで過ごす場所だから、時計を置いていないらしい。
でも、本当に時間を忘れてしまったら大変だから、この店では1時間に1回、見えないが時計の鐘が鳴る。
お客さんは、その鐘の音を頼りに時間の経過を確認する。僕は、いつもは鐘が2周鳴ったら帰ることにしている。
2回目の鐘が鳴り、ぼくは本を閉じ席を立った。店内を見渡すと、席はほとんど埋まっていた。
ここでは、人と関る必要はないけど、利用するすべての人が心地よく過ごせるような配慮を自然と皆がしている。
限りなくひとりで過ごしている空間・時間ではあるけど、実際は誰かと共有しているというのがこの場所の魅力。
安心感というか、なんと表現していいのか分からない安堵感。やっぱり、今日はここに来てよかった。
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福島のような地方では、どこに行っても知り合いに会ってしまう。スーパー、本屋、下手したらコンビニでも。スタバに行っても周りには知り合いがちらほら。知り合いに会うのが嫌なわけではない。
どこに行っても顔馴染みがいるのは安心感があってローカルの良さでもある。
でも、知り合いに合って少しの立ち話をするのも軽い挨拶をするのさえ面倒だと思ってしまう日があって、そんな日でもひとりで過ごすのはなんか違うなって思ってしまうわがままな日がある。どこかに”紛れ込みたい”そんな日が。
師走、急いでしまうのは周りを気にしてしまうから。ローカルならではの、いい”穏やかさ”と足りない”穏やかさ”。
どちらも大切にして、明日も”穏やか”な一日が過ごせますように。
第6話に続く。