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山岡 華 にとってのふくしま

●引越してきました

東京に住んで4年目、出張が多い夫がやたら福島に行く事が増えた。
いつのまにか福島の地域開発を任されていたという。
期間限定という形で結局私ごと転勤移住になった2021年、私は物件探しで福島に向かう新幹線の中、
郡山〜福島間で延々と続く緑の世界を窓から見つめ「何もない」「終わった…」と心で呟いていた。
(ごめんなさい)
東京に住むまで大阪市で育ち、仕事も趣味も遊びも全て大阪で詰め込み完結していた私には、
その位東北との縁や知識が薄く、かろうじて会津若松にだけ彼に連れられ観光で訪れていた程度。
2泊3日の物件探しで福島市への誤解が解けた私はゲンキンなもので、
「ここ面白そう!」とお気に入りエリアも見つけ、2人でわりと夜も賑やかで便利な場所を住まいに決めた。

【大阪 よく歩いていた日本橋】

コロナ禍。第何派かの中やってきた7月、市の要請でお店は開いていない。
安くて新鮮な夏野菜で自炊を楽しみ、毎週末ドライブをして、
様々な景色にも随分向き合ったお陰で、福島の自然の恵みの素晴らしさの虜になった。
巨大な雲もはみ出さない広い空に、毎日チャリンコを飛ばしてわくわく夏休み気分。
(無免許なんです)
マンションの13階からは吾妻小富士がくっきり。日の出も日の入りもガッツリ見える事に大感動。
トモダチは居ないが景色がある。
野生的な山々と街を飲み込む美しい空が私にとってはいちいち新鮮で、
玄関からの絶景を毎日インスタのストーリーにあげていたら、
大阪の友人から「大丈夫?」とひと言コメントがきた。笑
この時点で、少なくとも大阪に向かっては随分福島のPR活動をしてきたと思う。
(既に数組がまんまと遊びにきました)

【自宅からの景色がお気に入り】

それでも自分が東北に住んでいる事に現実味はなく、
ふとした時に「一体ここで何をしてるんだ?」と我に返っていた私が、
半年後には、帰省の用事ですり減った心身を、
白鳥が泳ぐ阿武隈川の河川敷で浄化するようになっていた。

●福島と大阪の違い

違うといえば違う事だらけなのだけれど、まず福島に関西人は少ないと思う。
東京でいくらでも聞いた関西弁は、こちらの方にはTVで聞く程度なのだろう。
東北と関西では言葉のイントネーションが逆のように感じる。
なので一度では伝わらない事が多く、併せて福島の丸く優しい口調の中でのそれは、
かなり尖った印象になる事、驚かせたくない事から、
私は東京に住んでいた頃よりよっぽど標準語を交ぜた変な話し方をしている。
(小さな戸惑いを気にせずバリバリの関西弁を通せる夫は逆にすごいと思う)
ましてやちょっと派手な身なりの私は
「関西弁の金髪」でご近所に通じるのではないかとすら勝手に思っている。
(ちなみに夫は関西弁のスキンヘッド)
(あっふたりともいい奴です)
県外の人から、福島の方は人見知りだけどとても面倒見が良く親切だと聞いていた。
関西特有のファーストコンタクトに引いているのもビンビンに感じ取り、
そのあと打ち解けるとほんとに温かい方が多くて安心する事にも慣れてきた。
(もちろん冬の洗礼も受けたし、福島と大阪の違いは、小さな冊子になる程にあります)

【ウルフルズの「大阪ストラット」の歌詞で関西人(私たち)はアガる】

●出会い

こちらで出会う大人や組織には、良くも悪くもわかりやすい、
地方ならではの意識や独特の人間関係がある。
そして、出会う若者は面白い事にそういうものを全然引き継いでいない。
これは意外だった。
頭でも肌でも「これから意味のないもの」「これから欲しいもの」を
自分たちでわきまえ整備しているように見え、
中間の年代の私たちにはコントラストがすごく楽しい。
どちらも大切。
歴史、名所、名物、風習が豊かな分、ここに新しい感覚が容赦なく織り交ざっていくこの感じが、
住んでわかるこれからの福島のマーブルカラーなのかと思う。
いつの間にか親しく関わっているVASEの斎藤くんは、
その入口を惜しみなく見せてくれる才能とエネルギーが溢れている。
出会えるものだなぁ、面白い人たち。

【有形文化財での元気なイベントTHE COFFE’Sにて
ここにもコントラスト】

●これから

夫の仕事に目処がついたらいつか離れるのだろう。
ならではの楽しさが散らばる福島にも、私個人の趣味や好きなものとしては出会いが少なく、
ネットでは満たされない部分も多い。
空が少々狭くても情報や感性が有り余る場所に刺激を受ける体質は、今のところガチガチに抜けない。
だけど。事情があり今でも大阪との行き来が多い私にとって、
福島の独特な空気や壮大な景色は良い意味で逃げ道とリセットの場になってくれている。
大きく優しい福島でなければ、私は自分たちを取り巻く状況に負けていたかもしれない。

地元の方はとても謙虚に「何もないよー」と言うが、
私は「福島、なんか面白いねん」と関西人に伝えている。
いつか離れたとしても「私のアナザースカイ」的な事を言うのだろうし(許してください)、
それがいつになるかもわからない今は、
少しでも深くこの地でコントラストを見つけ行き来したいな思っている。

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山岡 華

大阪生まれ大阪育ち 同じくの夫とふたり暮らし 東京生活4年を経て 2021年から福島市民

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