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遠藤彩子 にとってのふくしま

秋田出身の私がふくしまにいる理由

 秋田出身の私が福島県庁職員をしていると、「どうしてふくしまに来ようと思ったの?」とたびたび聞かれます。正直に言うと、来たときは大した理由はなかったのです。就職氷河期世代で、地元の秋田でも進学先の札幌でもことごとく就活に失敗し、最後に拾ってもらえたのが福島県庁だったというだけでした。

 その時一番喜んでくれたのは、ふくしま出身の母でした。母はふくしまから秋田の父のところに嫁ぎましたが、今思えば秋田になじめていなかったのでしょう。ときどき「ふくしまに帰りたい」とぼやいていました。秋田の人は何を言っているのか分からない、ふくしまは晴れが多いのにこっちは天気が悪い、秋田のスーパーに並んでいる魚は見たことがないからどう調理したらいいか分からない、ふくしまで売っているアレ(特によく言っていたのは凍み豆腐とくまだぱんと薄皮まんじゅう)は美味しかった・・・。そんな母のぼやきを聞きながら育ったので、私は刷り込みのように「ふくしまはいいところ」と思っていたのかもしれません。(そして、そんな母を見ていたことが、いま県職員として転入者の定住支援に力を入れるきっかけになったように思います。)

こうして、ふくしま=いいところと思いこんで育った私は、就職後県内あちこちを回りました。母から聞いたことがある地名を見るだけで、「ふくしまに来たんだ!」とわくわくしたものです。そのうち、場所や店だけでなく人ともつながることができるようになって、ますます居心地がよくなりました。何かの全国一位とかじゃなくていい。居心地がいい場所や、この人おもしろいことしている!という人など、そういうものがいくつもあるのって、それだけでこの地に住む理由としては十分。

もちろん住んでいればふくしまの愚痴を聞くこともあるけれど、そういう声をキャッチして、少しずつでも変えていける行政職員でありたい。私にとっても、誰かにとっても、住み心地がいいふくしまになれるように。

 ちなみに、ふくしま大好きな母ですが、震災と原発事故のときは「秋田に帰ってきたら?」と一度だけ私に言いました。当時私は未婚だったし、ふくしまにいなきゃいけない理由なんてないだろうと思ったのでしょう。「・・・ふくしまに、いたいな。」ふくしまで出会った人の顔を思い浮かべながら言った私に、母はもう何も言わずにいてくれました。

【秋田出身から見たふくしまのお気に入りポイント】

・冬なのに晴れてて明るい!

・水道水が冷たくて美味しい。(秋田も酒どころですが、水道水のおいしさは負けます。でもお酒のおいしさは秋田も負けてないと思っています!)

・仙台が近い!秋田からでは日帰りでは厳しい・・・。

・小学校の鼓笛にびっくり!こんなの見たことない。

・他人との距離感がちょうどいい。良い感じにほっておいてくれるし、助けてほしいときはSOSを出せば優しく助けてくれる(シャイな人が多いから自分からは来ないけど)。

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遠藤 彩子

1981年生まれ。秋田市出身、女の子二人の母。 福島県職員。

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