豊かさ以前に忘れていた時間
長い間福島市に住んでいるけれど、走るようになったのは最近のことだ。
走ってみて、福島市は存外とランニングに向いている街だと気付いた。草木の色の移り変わりが季節を感じさせる川沿いのサイクリングロードや、走るたびにいろいろな発見がある信夫山、西の方のあづま運動公園は走るのにうってつけだし、ちょっと頑張って温泉街を目指すのも楽しい。
走るモチベーションはいくつかあるけれど、好きなシューズとの出会いも大きい。東邦銀行本店の北側にある「Change of direction」には大手スポーツショップとは違った品揃えがある。置いてあるウエアもかわいい。見たこともない海外のシューズを、スタッフがわかりやすく丁寧に説明をしてくれる。そこで出会ったスイスのシューズ「On」がお気に入りだ。デザインといい履き心地といい、足を入れるのが楽しくなる。
「動くきっかけ」をつくりたいと、このお店ではいろいろなイベントを企画している。グループランをしたり、シューズの試し履きをしながら遠出をしたり。面白がって参加してみると、少しずついろいろな人と顔なじみになる。大会などですれ違う時に、笑顔を交わしたりするようになる。そういえばこの前は、一緒にグループランをした人がお店の前に小さな食堂を出していた。本職はなんだろう?
友だちが増えた、とは少し違う気がするのだけど、自分を知ってくれている人と、街中やいろんなところで出会ったりすれ違ったりするのは悪くない。軽くゆるやかなつながり、とでもいうのだろうか。「動くきっかけ」だったものが、いつのまにかつながるきっかけにもなっている。不思議だ。
福島市は良くも悪くも、穏やかな街だなと思う。派手な何かがあるわけではない。でも、周りを見るとあちこちでゆるやかにつながりを作ろうとしてる人がいることに気付く。今回なぜか舞い込んできたこの原稿にしてもそうだ。
ふくしまは、つながりを作ろうとする人、つながろうとする人が多い街なのかもしれない、と最近考えている。