あま にとってのふくしま
学校の授業を終えた僕はとぼとぼと駅へ向かう。大学から駅までの道のりはやけに坂が長いので下校というよりは下山といった感覚に近い。ほんの少し学校で過ごしただけだが、福島駅に戻ったときには疲労感が足にまとわりついていた。
その疲労感に気づくと同時に僕は空腹であることを思い出した。今日は授業に急ぐあまり朝食を食べていなかったのである。時計の針は12時を指し、スーツを着た人々が駅前を早々と通り過ぎる。地面を鳴らす革靴の音と信号機のサイレンが交互に鳴り響く。この音はランチの合図、いわば狼煙だ。
はらくっち
僕はわがままな人間なので、ランチというのはコスパが必要不可欠であると思っている。それはつまりお腹いっぱいにしてくれるボリュームであり、尚且つ財布を寂しくさせないランチということだ。
文化通りの脇にある小道へと歩くと、そんなわがままな要望をかなえてくれるお店がある。お店の名前は「はらくっち」である。看板を持った猫のイラストと日替わりのメニューが目印だ。
「はらくっち」さんの魅力はそのレパートリーの多さである。日替わりのメニューで2種類のご飯から選ぶことができる。一週間で多くの種類のご飯が楽しめるのだから、次行くときにどんなご飯が出てくるかを勝手に妄想してしまう。
ドア前に立ち、メニューを一通り眺める。肉豆腐、ハムエッグウインナー丼、明日はタラの甘酢あんかけとポークカレー……と翌日も気になるメニューだ。「肉」という文字が目に入った途端になんだか肉を食べたい心地がしたので、肉豆腐を選択することにした。「ハム」や「ウインナー」という文字にも惹かれたことは言うまでもない。
ドアを引くと優しそうな女性の店主さんの挨拶が僕を迎えてくれた。
店内はカウンター席数席とテーブル1席であり、カウンター席のほとんどは埋まっていた。お客さんの年齢層は幅広く、この食堂がいかに人気であるかがわかる。
椅子に腰かけて、僕は再度メニューに目を移した。というのもこのお店はご飯と小鉢を2品選ぶことができ、その小鉢の種類も5,6種類と多い。冷奴が食べたい気分だったので少し悩んだが、今日は肉豆腐を食べる予定だったことを思い出してヤーコン金平とラジウム玉子を選んだ。小鉢のメニューも日替わりなので、メニューに飽きることはないはずだ。
さて注文をしてから少しの時間が経つと、肉豆腐が来てくれた。写真を見て頂ければわかると思うが、豆腐がでかいのである。この豆腐の隣にはお肉、ねぎ、えのきが添えられており、豆腐を彩っている。旨味が染み込んだ豆腐はご飯との相性が抜群だ。それでいてマイルドで優しい味わいだから、最後の一切れまで豆腐を堪能することができる。そして小鉢だ。ヤーコン金平はニンジンとヤーコンのシャキシャキとした食感と甘みがクセになるので、食指が動くことは間違いなかった。
あっという間に食べてしまったが、この満足感で900円なのだからこのコスパの良さもこのお店が愛される理由だと思う。「お腹いっぱいになりましたか?」と店主さんが声をかけてくれた。もちろん大満足である。
会計を済ませ、ドアから出たときには身体の疲れは消え、元気を取り戻した気分になる。次行くときはどんなメニューが出てくるのか楽しみだ。
INFORMATION
はらくっち
営業時間:11:30-19:00
定休日:土曜・日曜